女性活躍推進ってよく聞くけど、女性だけ優遇して昇進させるってズルくない?
女性活躍推進ってちょっとモヤモヤする。男性の批判的な反応を見て、なんだか居心地が悪くなるな。
今日は現役人事の目線で考える「女性活躍推進」についてのお話です。モヤモヤを抱えている女性にぜひ読んでほしいな。
こんにちは!ワーママゆきゃです。
私はここ10年ほど人事の仕事をしています。その中で「女性活躍推進」にかかわる仕事にも携わっています。
国が制定している「女性活躍推進法」の中で、企業が女性管理職比率の数値目標を掲げるというのがあるんですが、これに関して最近のエピソードが2つあります。
先日コロナが明けて数年ぶりに大学時代の友人たちと会ったんですが、その中の男友達が「うちの会社の女性社員の割合は10%程度なのに、女性管理職比率30%にすると言っていておかしくないか。下駄をはかせるつもりなのか」と怒っていたんですね。
※下駄をはかせる・・・数量・点数などを水増しして、実際よりも多く見せること
後述のとおりこの話の詳細はこれ以上聞けていないのですが、女性比率10%の会社ですぐにでも女性管理職比率を30%までもっていこうとすると、ある一定の年代以上の女性社員をほぼ全員管理職にして、それより若い年代も高い比率で管理職に昇進させなければなりません。
普通は試験を受けたり、それなりの周囲の評価があって昇進しますから、全員が管理職になれるとは限りません。「管理職になる適性がない女性社員も、試験の点数や評価を水増しして管理職にするつもりなのか。不公平だ」と男友達は怒っているわけですね。
また、これは私が勤める会社の同僚女性から聞いた話ですが、男性上司が同世代の女性の昇進について「実力もないのに役員になれたのは女性活躍推進の数値目標があるからだ」と周りにグチをこぼしていたのだそうです。
確かに数値目標のためだけに、女性を昇進させている会社がないとはいえません。
でもちょっと待って。
管理職に昇進する男性は、みなさんその実力を兼ね備えているんでしょうか。
「実力もないのに」とか「下駄をはかせるのか」と批判する人がいますが、サラリーマンの昇進って「見込み」で決まるもの。男女問わず、組織を運営していくうえで「下駄をはかせる」ケースはあるのではないでしょうか。
デキる人が昇進後も成果を出せると限らないのは男性も女性も同じ
会社にはいろいろな役割があります。
- 指示された業務をこなす人
- 部下に業務を指示する人
- 部下を育成・教育する人
- 業務を統括・管理する人
- 会社の経営計画を立てる人 etc・・・
当たり前ですが、役割によって求められる能力は違います。
今の仕事で成果を出せている人が、昇進後も活躍できるとは限りません。
仕事ができる人の中には、「人に頼む」ことが苦手で部下のマネジメントがうまくいかない人がいるというのはよく聞く話。
もちろんこれは「男女問わず」です。
昇進は「実力」ではなく「見込み」で決まる
私は人事の仕事をしていますが、昇進や出世に向けた選抜は「見込み」で決まるといっても過言ではありません。
役職によって求められる能力が違うので、昇進後に活躍できるかどうかなんて、実際にその役職について業務を遂行してみないと分かりません。
私の周りでも、現場ではバリバリ仕事していたのに昇進して勢いがなくなったというケースはザラにあります。(こういうケースがないように人事も検討に検討を重ねるんですけどね…)
その「見込み」の考え方も、テストなど数値が出るものだけで算出できればいいですが、リーダーシップやマネジメントスキルは簡単に数値化できるものではありません。
見込みを考える際には「上司の所見」といった主観的な情報にも頼らざるをえません。
同じタイミングで同じ役職に昇進した人が2人いるとして、その2人が同じくらい成果を出せる見込みがあるのかというとそうではないのです。
「女性活躍推進法」にもとづいた数値目標を設けると、どうしても「女性が優遇される」という偏見を植え付けられてしまい、『女性の』昇進といういうだけでアラ探しされてしまう場面も多いのでは・・・と思っています。
女性が「私なんかよりあの人の方が管理職に向いているのでは・・・」なんて思う必要はないです。みんなそれぞれ持っている能力は違うし、どんな期待が寄せられて昇進するのかも異なります。
男女問わず「下駄をはかせる」ケースはありうる
「見込み」という曖昧なもので昇進が決まるので、下駄をはかされている(ように見える)人がいてもそれは当たり前のことです。
それでも、「女性は優遇されて(=下駄をはかされて)ずるいと思われているのでは」と気になってしまう方へ。
昇進させるために多少の「下駄をはかせる」というのは、女性活躍推進に始まったことではありません。
組織マネジメント(組織運営)という観点で考えたとき、たとえば部署A(昇進して行くような上部組織としましょう)に60歳間近の人しかいなかったら、その人たちの退職時期が来た時にいっきに人がいなくなり業務が滞ってしまいます。
それを防ぐためには、年齢が偏らないように配慮しながら若手を入れていかなければなりません。
めちゃくちゃ活躍している59歳の部署Aへの登用か、それよりは劣るがしっかり活躍している50歳の登用か、で考えると50歳の方を登用するということは戦略としてありえます。
また同様に、部署Aが1つの専門分野の人材に偏った組織になってしまったら、経営の仕方も偏ってしまう可能性があります。「本社に○○の専門分野の社員が少ないから(多少下駄をはかせてでも)昇進させよう」というのはありうる話です。
要は、男女というカテゴリーだけでなく、年齢や専門分野といった他のカテゴリーの観点からも組織運営を考えていくので、男性に「下駄をはかせる」ケースもあるわけです。
「下駄をはかせる」というと印象が悪いですが、より大きな期待をかけているとも言えます。
もちろん誰がどう見ても昇進に適さないと思う人材を無理やり昇進させるなんてことは、業務に支障が出てしまい経営に悪影響がでるので普通はしません。ちゃんと期待が持てる人のみです。
そういうケースもありうるというだけで、公正公平に選抜するのが基本。人に説明できないようなことはしません。
「女性活躍推進」という言葉が出てきて「女性が優遇されるのでは」という批判にさらされて、「自分は優遇されて昇進したのでは」と不安になる女性もいるかもしれません。
大丈夫、あなたの周囲の男性上司も下駄をはかされてる可能性はゼロじゃない…。そんなことより昇進後の活躍を期待されていることを信じてどーんと構えておけばいいんです。
企業は目標と同時に具体的なプランを示す必要がある
冒頭に書いた大学時代の男友達の話ですが、「その目標は何年後のゴールなの?採用も含めたプランは聞いているの?」とたずねてもそこは知らないようでした。
「女性比率10%の会社が女性管理職比率30%を目指す」と言っても、
- 3年後までに女性管理職比率30%を目指す
- まずは新卒採用の女性比率を上げて、15年後までに女性管理職比率30%を目指す
伝え方によって全然違って聞こえますよね。
前者であれば「通常の選抜では目標達成できないから、女性を優遇して管理職に昇進させるんだろう」と批判の的になります。
後者であれば、実現する可能性が見えてきます。批判も少なくなるでしょう。(ゼロとは言い切れない・・・)
批判が起こってしまうと、男性も女性も気持ちよく働くことができません。
女性活躍推進の話題は男性と女性の対立構造を生みがち。人はみな男か女かどちらかのカテゴリーに分類されるので、中立的な第三者の立場をとるのが難しい問題なんですよね。(ここではLGBTQは置いておきましょう)
数値目標だけが独り歩きしないよう、目標と併せて具体的な計画を企業は説明する必要があります。(人事の仕事でもありますね)
おわりに、「女性活躍推進」が嫌いな女性へ
「女性活躍推進」という言葉が嫌いな「女性」も多いのではと思います。
私自身も「嫌い」とまでは思いませんが、何かひっかかりを感じている一人です。
男女問わず誰もが働きやすく活躍できる環境を作っていかない限りは、女性の活躍は増えていかないと考えるから。
でも全部をいっきに変えていくのは労力がかかる(というか施策の効力が発散してしまう)ので、きっかけの一つとして「女性」を対象とした取り組みであってもいいのかなと思っています。
また、これに関して中原淳さんが著書「女性の視点で見直す人材育成」のなかで、女性を“最もメジャーなマイノリティ”と捉え「”最もメジャーなマイノリティ”にさえ対応できない職場が、今後、さらに多様な文化的属性・社会的属性に属する人々を『包摂(インクルージョン)』する環境をつくりだせるわけがない」と伝えています。
女性活躍推進は目的ではなく通過点の一つとして捉えると、女性のみなさまも少しは前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。
今日も読んでいただきありがとうございました。